選定療養による白内障手術を
ご検討の方へ
2020年の3月末で、多焦点眼内レンズを用いた白内障手術が先進医療から除外されたことで、医療保険(生命保険)のサービスにある先進医療特約の対象からも外れることになりました。厚生労働省の決定による処置になりますので、日本全国で一律の対応となります。
そのため、2020年4月以降は、多焦点眼内レンズによる白内障手術は自費診療扱いとなりましたが、新たに選定療養の対象になったことで、健康保険との併用が認められました。選定療養とは、健康保険が適用される単焦点眼内レンズを用いた白内障手術と多焦点眼内レンズの差額を支払うことで、白内障手術自体は健康保険で受けることができるという仕組みです。少し複雑な仕組みに感じるかもしれませんが、白内障手術の部分は健康保険が適用され、多焦点眼内レンズの部分は自費扱いという制度になります。
選定療養による
白内障手術の仕組み
選定療養とは、保険診療と自費診療を併用できる制度になります。よく知られている例としては、「差額ベッドへの入院」があります。
入院する際、普通より条件の良い個室などの病室を希望する場合は健康保険の対象外となりますが、通常の室料にあたる差額分を自己負担すれば、残りは保険が適用されるというものです。白内障手術に置き換えると、健康保険の対象となる単焦点眼内レンズは、あくまでも白内障を治療する目的に限定されますが、本来は自費診療となる多焦点眼内レンズは白内障と同時に老眼を改善することができます。このように、白内障を治療する手術の部分と、老眼を改善するレンズの部分を区分けして考えることで、老眼を治療するレンズの差額を自己負担すれば、あとは健康保険の対象となるのが選定療養の仕組みになります。
選定療養を利用すると
お得になるの?
選定療養とは、上の図のように健康保険が適用される単焦点眼内レンズと多焦点眼内レンズの差額を支払うことで、白内障手術自体は健康保険で受けることができるという仕組みのため、経済的負担が軽減されるようなイメージを受けますが、実際はどうなのでしょう?
患者様の自己負担分となる差額の部分については、2焦点眼内レンズと3焦点眼内レンズを選ぶことができますが、選定療養を実施している医療機関を見ると、2焦点眼内レンズの費用が片眼で20万円~30万円、3焦点眼内レンズの費用が片眼で30万円~40万円が平均的な価格となっています。ニーズの高い3焦点眼内レンズを希望した場合、両眼の費用を平均すると70万円程度が相場になっています。保険診療部分にあたる手術代や検査代、お薬代などを含めると3割負担の方で両眼15万円程度はかかりますので、合計すると負担額は85万円程になります。多焦点眼内レンズの費用は自費診療の部分になりますので、医療機関によって価格に差があるため、その点も解りづらくなっているようです。また、多焦点眼内レンズに適しているレーザー手術は対象外となりますので、手術は医師の手作業によるマニュアル手術しか選択肢がありません。レーザーによる白内障手術を希望される場合は、選定療養の対象外となりますので、手術を受ける前に確認することが必要です。一見するとお得に感じる選定療養ですが、仕組みをしっかり理解することが大切です。
選定療養の費用
レンズの種類 | 焦点 | 価格(片眼) |
パンオプティクス | 3焦点 | ¥368,000 |
パンオプティクス(乱視) | 3焦点 | ¥400,000 |
テクニスシナジー | 2焦点+EDOF | ¥368,000 |
テクニスシナジー(乱視) | 2焦点+EDOF | ¥400,000 |
アクティブフォーカス | 2焦点 | ¥220,000 |
アクティブフォーカス(乱視) | 2焦点 | ¥275,000 |
レストア | 2焦点 | ¥220,000 |
レストア(乱視) | 2焦点 | ¥275,000 |
テクニスシンフォニー | 2焦点 | ¥220,000 |
テクニスシンフォニー(乱視) | 2焦点 | ¥275,000 |
テクニス | 2焦点 | ¥220,000 |
選定療養は手術の選択肢が
制限されています
選定療養を活用する場合、選択できる多焦点眼内レンズは限られたものが対象になります。対象となるレンズには、2焦点眼内レンズと3焦点眼内レンズがありますが、国内で承認されているレンズに限られてしまうため、十数年前に発売されたレンズも含まれています。近年発売された新しいレンズは対象外となるものが多いので、どの多焦点眼内レンズも対象となるわけではありません。また、多焦点眼内レンズは、シビアなポジショニング(レンズの中心位置、乱視軸、前嚢切開位置など)が求められるため、良好な視力を得るためには高い正確性が求められます。そのため、多焦点眼内レンズを選択される多くの方が、レーザーによる白内障手術を希望されています。当院で実績では、約93%の方がレーザー手術を選択していますので、そのニーズの高さは歴然です。
選定療養には以下のような
デメリットもあります
- ●選択できる多焦点眼内レンズの種類が限られている
- ●新たに発売された多焦点眼内レンズは対象外のものが多い
- ●医師の手作業によるマニュアル手術しか選択できない
- ●レーザーによる白内障手術を選択すると選定療養の対象外となる
- ●費用的負担が必ずしも軽減されるわけではない
- ●自己負担の部分には消費税10%もかかります
- ●選定療養に対応していない医療機関も多く存在する
当院では選定療養と変わらない価格で
3焦点眼内レンズによるレーザー白内障手術をご用意しています
選定療養を活用して3焦点眼内レンズによる両眼の白内障手術を希望した場合、3割負担の方で平均総額85万円程の費用がかかります。
歯科のインプラントでもこれ以上の費用をかける方もいますので、大切な眼の手術の費用として考えれば納得できるかもしれませんが、せっかく多焦点眼内レンズを選択されるのであれば、その性能を活かすためにもレーザー白内障手術を選択することが、実際に手術を受けられる患者様にとって重要な部分になると思います。ただ、残念ながらレーザー手術は対象とはならないので、渋々ながら選定療養を検討される方もいらっしゃるのではないでしょうか︖当院では、約93%もの方が選ばれているレーザー白内障手術の存在は非常に大きなものだと考えていますので、3焦点眼内レンズを用いたレーザー白内障手術を、選定療養と変わらない価格でご用意しております。
監修者
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